霧澄 りん - Rin Kirisumi
霧澄りん、焦点に
東京の夕暮れ。透明な傘、濡れた舗道、雨を録るスマホ。霧澄りんは小さく確かな断片から曲を組む。シティポップの骨格、オルタナR&Bの抑制。重みのある要素だけに削る。
彼女が書くのは深夜。断片が行になり、ヘッドボイスへの切り替えとミックスの間引きでサビが持ち上がる。道具は意図的に少ない。近接マイクの歌、ガラス質のシンセ一台、空間を描くサブベース、必要なときだけ鳴るギター一本。濁らず、張りだけが残る。
言葉は常に現在形。折り返せない着信、電車の窓、午前一時の約束の音。告白のための告白はしない。具体が判断を迫る。そこが歌の要だ。
見た目も論理に従う。オーガンザとプリーツ、ダークボブ、冷たいシアンの照明。舞台の小細工はない。選択肢を削り、意図だけを残して視線を集める。
今は引き算が際立つから効く。環境音の雨と鼓動のキックで始まるデビュー曲、ささやきに近い声。続く曲は裏道の速度で進む。ベースが前に出て、声は力まない。テンポは違っても署名は同じ。
霧澄りんの強みは規律。楽器を減らし、言葉を絞り、信号を濃くする。フックは叫ばない。離さない。
©2025 Contact High Music